臨床開発モニター(CRA)の仕事|【ナースのお仕事navi】

CRA(臨床開発モニター)について

CRA(Clinical Research Associate)は、日本では臨床開発モニター、モニターなどと呼ばれる職種です。CRC同様、治験(新薬の効能・副作用を実際の患者でテストする場。臨床試験のこと)で重要な役割を果たし、臨床開発に大きく寄与します。CRCが主に患者(治験の被験者)に対するケアやサポートという立場を取るのに対し、CRA(臨床開発モニター)は、治験全体を取り仕切るポジションとなります。

1998年に起こった薬害エイズ事件を受け、臨床試験に関する業務はそれまでと比べてかなり多くなりました。その後、2010年前後以降は、外資系製薬メーカーの売上を担ってきた大型薬が特許切れを迎えたことで、各社共に新薬の開発が活発化していることもあり、臨床開発のニーズが高まっています。また、近年のトピックスとして、新薬の世界同時申請・販売を実現するためにも、グローバルスタディや国際共同治験と言われる、治験規格の世界共通化が測られようとしています。日本はドラッグラグという、他国に比べて薬が発売されるまでに時間が掛かりすぎることが問題視されることがありますが、臨床開発モニターがグローバルスタディを推進していくことで、こうした問題は少しずつ取り除かれてゆくでしょう。医薬品業界全体を牽引する、重要な仕事でもあるのです。

CRA(臨床開発モニター)の主な仕事内容

治験が正しく行われるよう、治験開始の事前準備から、治験中の監視、そして終了後の手続きまでを行うのが、CRAの役割です。具体的には…

  1. まずどの医療機関で臨床開発試験を行うか…実施機関の選定
  2. 医療機関との治験契約業務
  3. 治験責任医師の選出・プロトコール(治験実施計画書)の作成
  4. 治験の準備(スケジュールや契約の確認、治験関連支給品や記録の準備等)
  5. 関係者(治験実施スタッフ)へ治験内容の説明会を実施
  6. 治験モニタリング業務(治験が計画書通りに進んでいるかを監視する)
  7. 症例報告書のチェック・治験責任医師のコメント回収
  8. 治験終了の諸手続き(未使用薬の回収や報告書の作成など)

など。メインとなるのは、いざ治験進行が始まってからの、モニタリング業務です。病院を舞台に、医師と連携を取ったり、時にはカルテに目を通す必要もあるため、看護師の資格というより、経験がフルに活かせる職業として、注目を集めています。
ちなみにCRCは、製薬メーカーか、CROと呼ばれる一般企業に就職し、オフィスと治験を行う病院とを往復するような勤務スタイルとなります。一般企業のため、土日いずれかが休みになることも多く(但し治験を行う病院による)、企業で働きたいという希望を抱いた看護師に人気があります。

CROとは

治験は、製薬会社が新しい薬の開発の一環として行います。そのため、CRAは製薬会社に勤務し、自社の薬の治験を担当します。ですが、企業によっては、新薬の数が多かったり、あまり大勢のCRAを会社側が雇っておけない場合などがあり、そういう場合には、外部の機関に委託する必要が出てきます。CRO(Contract Research Organization=受託臨床試験実施機関)は、製薬メーカーが行う治験業務の一部または全てを代わりに行う、治験のプロ集団的な機関です。
ちなみに、製薬メーカーのCRAがリーダー的役割を果たしながら、その下でCROのCRAが治験を進めていく、といったケースもあり、業務内容や裁量はメーカーのCRAの方が多い場合が一般的です。
CROは、有名企業ではクインタイルズ、シミック、イーピーエスなど…国内に数十社存在していますが、企業によって社風や福利厚生は異なります。全体的な給与条件等は製薬メーカーの方が良い傾向にありますが、一部のCROでは女性の働きやすさと制度が充実していて、とても人気があります。

CRA(臨床開発モニター)になるためには

CRAは看護師のような国家試験もなく、これといった資格を取得しなくても、求人サイトなどから応募して、なることができます。上で述べた通り、医師やCRCと共に治験を担当するため、看護師や、看護学部または医学部等の出身者は、比較的面接で有利だと言われています。ですが、メーカーのCRA求人は、CRAとしての実務経験を求める場合が多く、看護師から転職の場合、はじめはCROで経験を積むことが一般的となりそうです。
なお、CROや、CRAの求人を扱う人材紹介会社では、CRA未経験者のための研修セミナーなどが実施されている場合があります。