介護施設で働く看護師
看護師さんの活躍の場として、ここ数年で大きく需要が拡大しているのが介護施設です。
介護施設と一口にいっても「老人ホーム」「デイサービス」など、様々な形態がありますが、共通して病院と大きく違うのが、介護施設は治療の場ではないということです。したがって、介護施設における看護師さんの看護スタイルも病院とは異なり、日常生活を“見守る”ことがメインの看護になります。主な役割は利用者の健康管理。高齢者の方の日々の健康状態を把握し、何かいつもと違うと感じた時に医療機関と協力して適切な処置を行います。急患があったり、オペがあったりと四六時中あわただしい病院と比較すると、ゆっくりと時間をかけて利用者さんと向き合えるのが魅力といえるでしょう。
介護施設での看護師さんの主な仕事内容
先にお伝えしたように、介護施設での看護師さんの主な役割は「利用者の健康管理全般」です。
具体的には...
- バイタル測定
- 服薬管理
- インシュリン注射
- 簡単な医療処置(吸引・口腔ケア、胃ろう管理、じょく創ケアなど)
- 緊急時の対応(医師・家族・施設管理者への連絡、救急車同行)
- 医師の指示に基づく処置(応急手当)
- 介護スタッフの支援・相談対応
- 施設の衛生管理
などが挙げられます。
生活全般における介助(トイレ、食事、入浴など)は基本的には介護スタッフの仕事ですが、施設の種類や規模、職員構成によって、看護師さんも介護に積極的に携わる場合もあります。相対的には、施設規模が小さくスタッフが少ないほど看護師さんが介護にも関わることが多いと考えてください。
介護施設の種類
介護施設には「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」など様々な種類があります。いずれの施設でも看護師さんの主な役割は健康管理ですが、施設利用者の介護度の高さにより医療的行為の幅も変わってきます。それぞれの施設の特徴を理解することで、実際の仕事のイメージを広げましょう。
特別養護老人ホーム(略称:特養 とくよう)
特別養護老人ホームとは、公共の老人ホームです。入居対象者は介護度1~5の要介護者で在宅介護が困難な65歳以上の方。全国に約6000施設あり、その数は介護施設の中でも最も多いのですが、民間に比べて費用が安いため、入居待ちの人が多く3年以上待たされることが常態化しています。入居にあたっては重度の方を優先しているため、実態は要介護度4~5の人が多く、特養は入居者にとっての終の棲家となっています。「ひとりひとりの入居者の人生に寄り添った看護がしたい」という看護師さんには、おすすめの求人です。なお、特養には医師は常駐していないため、何かあったときには看護師に医療判断がゆだねられます。このため、ある程度病院での経験があるほうが望ましいと言えるでしょう。また、夜勤が原則ありませんので、家庭との両立を望む看護師さんにとって働きやすい就業環境です。もちろん特養自体は24時間体制なので、オンコールはありますが、病院のオペ室のように深夜に駆けつけるということはまれで、電話で入居さんの状態を確認し、医師や介護士に連絡を取ることがほとんどです。
職員の配置は入居定員100人当たりに対し、医師(非常勤可)1人、看護師3人、介護職員31人、介護支援専門員1人、その他生活指導員等とされています。
有料老人ホーム
有料老人ホームとは、主に民間が運営する老人ホームです。入居条件は「入居時自立」「入居時要介護」など施設により様々で、年齢の目安としては60歳以上を対象にしているところが多いです。近年、看護師さんの採用ニーズが伸びているのがこのタイプの介護施設です。というのも看護師さんが常駐していることが利用者の安心材料となり、入居希望を後押しするためです。有料老人ホームの特徴としては、利用者および家族からの施設に対する要望が高いことが挙げられます。というのも、公共の老人ホームと比較すると、入居金が数千万にかかるうえに月額利用料も高いためです。スタッフは入居者ひとりひとりの生活リズムに合わせた介護を提供し、各個人からの要望に応じて日常生活をサポートしていきます。有料老人ホームのスタッフにとって利用者は「お客様」、スタッフの一員である看護師さんもホスピタリティの高いサービスを要求されるものと心得ておきましょう。
ホームによって運営方針は様々で、高級感を打ち出しているところ、アットホームな雰囲気を大事にしているところなど、それぞれ特徴がありますので、一度見学にいって自分が働くイメージがもてるかを確認すると良いでしょう。夜勤の有無や給与水準も経営母体によって変わってきます。大手が経営している場合は、福利厚生が充実していたり、自分が休んでも他の系列施設から応援が来たりするなど、プライベートとのバランスが取りやすい環境が整っています。
職員配置は看護師・介護職員が入居者に対して3:1以上、その他に管理者・生活相談員・計画作成担当者等が必要とされています。
介護老人保健施設(略称:老健 ろうけん)
介護老人保健施設とは病院から家庭に復帰するためのリハビリを目的とした施設です。入居対象者は介護度1~5の要介護者で病院での治療を終え安定期に入った65歳以上の高齢者。全国に約3500施設あり、医療機関が母体で運営しているケースが多く、他の介護施設と比較すると医療色が強いことが特徴です。また、自宅復帰が前提であるため在所期間も短く、原則的には3ヶ月ごとに入所の必要性を確認し、6ヶ月を最長期間としています。
医療色が濃いだけに、医師が常勤している、看護配置が高い、24時間体制で夜勤もあり、という点が特徴です。看護師の人数が比較的多く、かつ病院と比較すると高度な医療知識は必要とされないためブランクのある看護師さんにとっては働きやすい環境と言えるでしょう。
職員の配置は入所定員100人当たりに対し、常勤医師1人、看護師9人、介護職員25人、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士1人、介護支援専門員1人、その他 支援相談員等とされています。
デイサービス(通所介護)
デイサービスとは介護を必要とする方を自宅から送迎し、入浴や食事、レクリエーション、機能訓練などを提供する介護施設です。利用対象者は要支援1~2、要介護1~5の高齢者。
入所型の施設の利用者と比較すると介護度の低い人が多いため、医療行為が少ないのが特徴です。主な仕事は入浴を受ける人の入浴前後のバイタルチェックや、服薬管理・口腔ケアなど。残業が無く、日勤のみのため、家庭との両立がしやすいという点でお子さんをお持ちの看護師さんに人気の求人です。ただし、看護師が1名という施設が多く、休みが取りづらいという点には注意が必要です。
職員の配置は看護師、介護職員、常勤管理者、生活相談員、機能訓練指導員が必要とされています。
以上、ご紹介した以外にも、認知症の高齢者を対象としたグループホーム、低額な料金が特徴の経費老人ホーム(A型・B型・ケアハウス)、主に経済的な理由によって自宅での生活が困難な高齢者を対象とした養護老人ホームなど、様々な介護施設があります。また今後はサービス付き高齢者向け住宅や高齢者向け分譲住宅の利用者が増えることが予想されます。