認定看護師になるには
1.あなたもなれる認定看護師
看護師さんなら、誰もが聞いたことがあるであろう「認定看護師」
皆さんの病院にも何名かいらっしゃるのではないでしょうか?
ハイレベルな看護技術と知識を兼ね備えた看護師さんが持つこの資格は、日本看護協会による認定審査を突破した方に与えられています。
1995年に認定看護師制度が発足して以降、徐々に人数を増やし、2012年現在で約1万名が全国で活躍しています。医師不足が叫ばれる医療現場において、特定領域における高度な知識とスキルを持つ認定看護師は、看護のエキスパートとして欠かせない存在となっています。
「ちょっと憧れるけど、実際に自分がなるイメージはわかない」
「主任レベルじゃないとなれないんじゃ…」
「資格を取るには、お金も時間もかかるって聞くけど…」
・・・等、認知度が高い割には、実態が把握しにくいのが現状かもしれません。
そこで、このコラムでは皆さんが気になるこの資格の全容を少しずつ明らかにしていきたいと思います。
まず結論からお伝えすると、看護師さんであれば誰でも認定看護師になれるチャンスがあります。 ごく一部の限られた人しかなれないものではありません。
ただし、クリアしなければいけない条件が2つ。
それは、「時間」と「費用」です。
そして、この2条件をクリアした上で絶対に必要な要素がひとつ。
「努力」です。
看護師になるのに時間と費用と努力がカかった必要であったのと同じように、認定看護師になるにもそれ相応の時間と費用と努力が必要です。
逆に言うと、これらを満たせばどなたでも認定看護師になれるのです。
看護師になれたあなたなら、最初の関門は突破しています。
「認定看護師」になるには大変な努力が必要ですし、資格取得後も更なる自己研鑽が求められます。
しかし、よりよい看護を身につけたいという強い意志さえあれば、決して高いハードルではないのです。
まずは「認定看護師=雲の上の存在」という認識を改め、実際に認定看護師資格取得への道のりを見ていきましょう。
2.押さえておきたい基本情報
まずは認定看護師について、その全体像を掴むべく、定義や役割、分野などの基本情報をおさらいしましょう。
「認定看護師」とは
日本看護協会が実施する「認定看護師認定審査」に合格し、登録手続きを済ませた看護師のことを指し、ある特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる方のことをいいます。
認定看護師の役割
認定看護師の役割は、「実践・指導・相談」の3つとされています。
高度化及び専門分化する医療現場において、認定看護師がこの3つの役割を果たすことで、看護ケアの広がりと質の向上を図ることが期待されています。
〈3つの役割〉具体的には?
実践 特定の看護分野において、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する。
指導 特定の看護分野において、看護実践を通して看護者に対し指導を行う。
相談 特定の看護分野において、看護者に対しコンサルテーションを行う。
認定看護分野
認定看護分野は、高度化及び専門分化する保健、医療及び福祉の現場において、熟練した看護技術及び知識を必要とする看護分野として、日本看護協会の認定看護師制度委員会が認めたものをいいます。2012年現在で、以下の21分野が特定されています。
認定看護分野 | |||||
---|---|---|---|---|---|
1 | 救急看護 | 2 | 皮膚・排泄ケア | 3 | 集中ケア |
4 | 緩和ケア | 5 | がん性疼痛看護 | 6 | がん化学療法看護 |
7 | 感染管理 | 8 | 訪問看護 | 9 | 糖尿病看護 |
10 | 不妊症看護 | 11 | 新生児集中ケア | 12 | 透析看護 |
13 | 手術看護 | 14 | 乳がん看護 | 15 | 摂食・嚥下障害看護 |
16 | 小児救急看護 | 17 | 認知症看護 | 18 | 脳卒中リハビリテーション看護 |
19 | がん放射線療法看護 | 20 | 慢性呼吸器疾患看護 | 21 | 慢性心不全看護 |
○各分野の認定看護師登録者数(日本看護協会のサイトに移動します)
3.半年間?5年間?認定看護師になるまでの道のり
認定看護師資格取得までの流れ
保健師、助産師、及び看護師のいずれかの免許を保有していること
実務経験5年以上(うち3年以上は認定看護分野の経験)
認定看護師教育課程終了(6ヶ月・600時間以上)
認定審査(筆記試験)
認定看護師認定証交付・登録
「認定看護師」というとある程度ベテラン、もしくは中堅以上の方のイメージがあるかもしれませんが、これは認定看護師になるために実務経験期間が問われるためです。どんなにやる気と実力があっても、学校を卒業してすぐには認定看護師試験にチャレンジできないのです。
ここで認定看護師にチャレンジするために必要な実務経験期間について整理しましょう。
まず、認定看護師になるために必要とされる実務経験期間は5年間です。この期間は、転職・休職などでブランクがあったり、勤務施設が変わったりしても通算することができます。
ただ、気をつけたいのは、資格取得したい認定分野での経験も3年以上必要ということです。
たとえば、あなたが緩和ケア認定看護師になりたいとしたら、看護師として5年以上、そのうち3年以上は緩和ケアの経験が必要ということです。つまり、いくらなりたくても未経験分野にはチャレンジすることができません。
いつか認定看護師になりたいという人は、希望する分野での経験が積めるように配属希望を出すようにしましょう。
この実務経験という条件をクリアしたうえで、認定看護師教育課程を修了して初めて認定審査を受けることができます。
認定看護師教育課程
認定看護師教育課程を実施する認定看護師教育機関は、2012年現在、全国に53機関あり、80課程が開講されています。
この教育課程は6ヶ月以上と定められており、授業は通常平日の昼間に行われるので、勤務を続けながら通学することはできません。多くの方が、休職あるいは長期出張扱いで学んでいます。(一部、週2日の開講で勤務しながら通学できる学校もあります。)
「ただでさえ忙しいのに、自分がいない間、他の人にシフトのしわ寄せがいくかと思うと・・・」と悩み、一歩踏み出せずにいる人が多いのも実情。しかし、早めに師長に申し出ることで、人員補充などの対策もできます。「いつかチャレンジできたら・・・」と思っている人も人事面談などの機会で早めに伝えておくようにしましょう。
というのも、先に述べた認定看護師教育機関ですが、かなり偏在しており、分野によっては全国で1箇所しか開講していないケースもあります。自宅からの通学範囲内にある人の方がまれで、大半の人が在学中は学校の近くで家を借りて一人暮らしをして通学しています。これは、ご家族とお住まいの方、特にお世話が必要な小さいお子さんや高齢のご両親とお住まいの方にとっては、かなりのハードルになります。「いつか・・・」と思っている人も、自分の将来設計を考え、チャレンジできるタイミングを逃さないことが肝要といえるでしょう。
なお、この認定看護師教育機関は、各校ともカリキュラムは同じですが、費用や開講期間は様々です。希望の認定分野が決まっている人は早速各校の募集要項を確認しましょう。なかには願書受付期間が1週間しかない学校もありますので、早めの準備が必要です。
○認定看護師教育機関一覧(日本看護協会のサイトに移動します)
認定看護師になるまでの大まかなスケジュール
先に述べたように、教育機関のスケジュールは各校様々です。大まかなイメージとしては、認定資格を得るには、学校への願書提出をスタートとして約2年かかると考えてください。さらに、各校のリサーチや受験に向けた試験勉強、書類準備も含めるともっと時間がかかります。
ここでは認定看護師教育機関のひとつ、日本看護協会の看護研修学校を受験するA子さんを例にお伝えします。
2011年4月 | 各種書類の準備、勉強スタート |
---|---|
2011年7月 | 願書提出 |
2011年9月 | 入学試験 |
2012年4月~2013年3月 (登校は2012年6~12月) |
授業 |
2013年5月 | 認定審査 |
2013年7月 | 合否発表・登録申請 |
2013年8月 | 認定証の受領 |
2013年9月 | 認定看護師として勤務スタート |
【推薦書も必要!?認定看護師教育機関への応募書類】
教育機関への願書提出にあっても注意が必要です。それは応募書類の作成に時間がかかるということ。
必要書類の中には施設長からの推薦書や勤務証明書等、病院にお願いしなければいけないものも含まれています。現在の病院での実務経験期間が応募要件に満たない場合は、過去の在籍施設にも連絡を取らなければいけません。また、自分で用意する書類のなかにも看護事例報告書など作成に時間を要するものがあります。なるべく早めに準備を進めましょう。
【応募書類例】
○自分で用意するもの
入学願書/履歴書/実務研修報告書/事例等要約/志望理由書
その他、受験票・写真票・入学検定料納入票など
○施設にお願いが必要なもの
推薦書/勤務証明書 など
※ 教育機関により必要書類は異なり、推薦書不要のケースもあります。
4.総額200万円超!?認定看護師資格取得にかかるお金
認定看護師になるには、時間と同時にお金もかかります。
概算200万円、あるいはそれ以上と言われますが、その内訳をご紹介しましょう。
【全員共通でかかる費用】約100万円
- 入試検定料
- 約5万円
- 入学金
- 約5万円
- 授業料
- 約70万円
- 実習費
- 約10万円
- 認定審査費用
- 5万円
- 認定費用
- 5万円
【各々の状況に応じてかかる費用】100万円~
家賃 |
:教育機関は寮がないケースがほとんど。 家具つきの短期契約型賃貸マンションを借りる方が多いです。 |
---|---|
引越し費用 | :単身者パック等を利用 |
宿泊費 | :実習中にマンスリーマンションやホテルを利用するケースもあり |
交通費 | :入学試験・認定試験のための移動交通費・通学定期・実習中の移動交通費など |
参考書籍代・文献のコピー費用 | :書籍代が学費と同じぐらいかかったという人も… |
パソコン・プリンター・ソフト代 |
:ノートパソコンは必須です。 持ち運びやすい軽いものがオススメです。 |
いかがでしょう?上記に加えて、もちろん生活費がかかってきますし、現在一人暮らしの人は今のマンションの家賃も払い続けることになります。
かなりの高額ですが、病院の支援制度や各種奨学金を利用することで自己負担を軽減できます。まずは自分の施設の支援内容を調べてみましょう。
支援制度は病院によってさまざま
病院によって、通学中も給与が支給されたり、授業料や家賃も一部助成があったりとその支援内容は様々です。
(例)
A病院
研修期間中は職免で身分保障。(給与はなし)
最高200万円を無利息で貸し出し。(返済義務あり)
B病院
研修期間中は休職扱いで、基本給の3分の2を支給。さらに授業料の2分の1を助成。
(ただし、5年以上勤務かつ研修後も引き続き3年以上勤務できることが条件)
C病院
研修期間中は休職扱いで、給与および賞与を支給。入学金・授業料も病院が負担。
受験費用・交通費等を最大10万円まで支援。
(ただし、院内の試験を通過したものに限る)
奨学金について
病院の支援制度以外にも、奨学金を利用するという方法もあります。
教育機関により利用できる奨学金が異なりますので、まずは受験予定の教育機関のホームページ等を確認しましょう。
奨学金は、県や市が運営する看護師等修学資金や看護協会の奨学金などがあり、2つ以上併用できる場合もあります。金額や貸与条件、返済方法についてはそれぞれの貸付機関においてよく確認しましょう。なかには一定条件を満たすと返還不要のものもあります。
○認定看護師教育課程奨学金〈日本看護協会〉
貸与額 | :120万円以内 |
---|---|
返還について | :認定看護師教育課程を修了した翌月から起算して3ヶ月後から一括又は割賦により全額を返還。返還期間は24ヶ月以内。 |
○認定看護師修学資金貸与制度〈滋賀県〉
貸与額 | :月83,000円(上限 6ヶ月で498,000円) |
---|---|
返還について | :一定条件をクリアすれば返還免除 |
条件1 教育課程を修了した日から1年を経過する日までに実施される、修学資金の貸与を受けた教育課程の目的とする認定審査に合格し、直ちに認定証を取得すること。
条件2 認定証取得後直ちに特定施設に就業し、引き続き5年間看護職員として業務に従事すること
5.超難関!認定看護師教育課程の受験対策
いざ、受験する教育機関が決定すればさっそく受験対策をしましょう。
受験倍率は各校さまざまで公開されていませんが、過去に受験した人の話によると実に4倍近いケースもあるようです。かなりの難関ですね。
内容としては筆記試験と面接があります。
筆記試験に関しては、択一式、記述式、小論文もあり・・・と各校特徴があり、ある程度傾向を掴んでおいたほうが受験には有利と言えるでしょう。出願した人限定で過去の試験問題を公開している学校もあります。身近に受験したことのある人がいれば、問題を見せてもらいましょう。また、看護協会のホームページに、認定看護師登録者一覧があるので自分の希望する認定分野の先輩に連絡を取ってみてもいいでしょう。勉強の仕方や面接対策などアドバイスがもらえるかもしれません。
面接対策
面接のポイントは何といっても志望動機です。これはどの教育機関でも聞かれるものと思ってください。単に「資格が取りたいから」でなく、「なぜ認定看護師になりたいか」「認定看護師になって何がしたいのか」「教育課程を経て何を学び、身に付けたいのか」等、具体的に自分の言葉で伝えられるよう、練習しておきましょう。
過去問が手に入らない場合も焦ることはありません。募集要項に記載されている出題範囲を確認して、専門書や雑誌で独自に勉強を進めましょう。いずれにしろ、特定分野での専門基礎知識は、入学後に高度な内容を学ぶための土台になります。入学してから「もっと勉強してくればよかった。」と後悔する人も多いよう。ハードスケジュールの中で、勉強時間を作るには、家族や職場の仲間などの協力が不可欠です。大変でしょうが、事前勉強がおろそかなままで入学しても、せっかくの高度な内容がなかなか身に付きません。実のある研修にするためにも、専門範囲および周辺の看護に関してしっかり学んでから受験に挑みましょう。
また日頃から、学会やセミナーに参加するなどして各分野における医療動向にアンテナを張ったり、実践でも常に問題意識を持ち、根拠を明確にアセスメントしたり、説明したりできるように意識しましょう。こうした日々の積み重ねが、何よりの財産になります。
6.認定看護師教育課程、気になる授業内容は?
病院を離れて久しぶりの「学生生活」というと少し華やかなイメージがあるかもしれませんが、認定看護師への道はそんなに甘くはありません。
卒業生の多くが「大変だった」と口を揃える教育課程、その授業内容を見てみましょう。
1クラスの生徒数は15~30名。
授業は看護協会が定めるカリキュラムにのっとって進められます。
大きく共通科目と専門科目に分かれており、共通科目は全分野共通で「看護管理」「リーダーシップ」「看護倫理」「医療安全管理」などを学び、専門科目は文字通り、各分野の専門領域を学びます。
講義形式のほか、技術演習やロールプレイ・グループワークが多く盛り込まれており、教えてもらうというより学んだ内容や自分の考えを発表するといった参加型の授業が多いのが特徴です。
講義内容にはまだ文献にも載っていないような最先端かつ高度な内容が含まれ、しっかり理解するためには毎日の予習・復習が必須です。定期的に試験がある上、レポートなどの課題も多く、授業時間以外に自己学習にあてる時間が相当必要になります。
また教育課程の後半に実施される隣地実習では、教育機関を離れて約1ヶ月半、初めての施設で自分の専門領域の患者を受け持ちます。その施設のやり方を覚え、スタッフと信頼関係を築きながら、看護計画の立案、記録のまとめ、さらにはレポート作成など、スケジュールは多忙を極めます。
そして実習が終わると、再度教育機関に戻って事例発表会が待っています。実習施設の指導員も集まるなかで各自の看護実践を報告し、成果や課題を発表します。講義で習得した知識・技術を実際に個々の看護場面に応じていかに実践できるかが問われるのです。
いかがでしょう?とにかく大変そう、ということがお分かりいただけたかと思います。
ただ、学校を卒業して以降、こんなに勉強に集中できる機会はなかなかありません。
在学中は休日返上、寝る時間も惜しんで勉強するぐらいの覚悟はしておいたほうが良いでしょう。
【入学前にこれだけは!】
・パソコンの基礎スキルを身につけておこう
レポート課題の作成、事例報告、情報処理など、パソコンは頻繁に使用します。
基本的な操作やキーボード入力を身につけておくとともに、できれば、ワード、エクセル、パワーポイントの操作にも慣れておいたほうが良いでしょう。
また、教育機関からの連絡は主に電子メールが使われます。インターネットと電子メールが使える環境にしておき、メールの送受信(メールにファイルの添付も可能)ができるようにしておきましょう。
7.認定看護師 認定審査当日はまるで同窓会!?
認定試験は、毎年1回、5月に全国4会場で同時に開催されます。
教育機関での研修はたいてい12月あるいは3月に修了するので、その後認定審査の日までは、自施設に戻って勤務を続けながら試験勉強をすることになります。
そのため試験当日は久しぶりに全国の仲間と再会できるということもあり、試験の緊張感とあいまって会場はかなりの熱気に満ちています。
試験内容は筆記試験で、四肢択一のマークシート方式です。共通科目を含めた各認定看護分野の教育基準カリキュラムから出題され、時間は120分です。
合格発表は約2ヵ月後、ここ数年の合格率は90%台と非常に高い値です。さすがに教育機関で鍛えられただけのことはありますね。
ここで無事に合格すれば、認定料5万円を納入し、認定看護師として看護協会に登録。さらに1ヵ月後に「認定証」を受領し、晴れて認定看護師としての活動がスタートします。
【試験当日に体調不良になったらどうなるの?】
筆記試験の受験を許可された人がやむを得ない理由により試験を欠席する場合、看護協会の所定の手続きを踏むことにより翌年度の認定審査1回に限り、審査料を免除の上、認定審査を受験することができます。
【認定試験に合格できなかった場合、もう一度学校に行かないといけませんか?】
過去に一度でも認定看護師の受験申請をしたことがあれば、同じ分野で再受験することができます。
8.合格してからがいよいよ本番。認定看護師のお仕事
最後に、認定資格をとった看護師さんのそれぞれの働き方をご紹介しましょう。
認定看護師の働き方は、施設によって、また個人によって様々です。というのも、現状認定看護師の活動として特別に定義されているものは無く、各自が認定看護師の役割『実践・指導・相談』を果たすべく、施設と話し合いながら新たな働き方を作り出しているためです。
Aさん(緩和ケア認定看護師)
緩和ケアチームに所属(専従勤務)
- 週1回、各種医療スタッフからなる緩和ケアチームで病棟をラウンド。
- 緩和ケアの必要な患者および家族に対する直接ケア(病棟・外来)
- 緩和ケア相談窓口を開設
- 在宅療養が可能な患者に関して訪問看護師との連携
- 診療所からの患者さんのケアに関する質問に対応
- 緩和ケアリンクナースの育成
- 院外セミナーの講師
Bさん(皮膚・排泄ケア認定看護師)
外科・泌尿器科病棟に所属
- 病棟勤務をしながら、週1回認定看護師としての活動日を設け、医師・栄養師・薬剤師などと連携して褥瘡回診やストーマ外来を実施。
- 病棟・外来看護師から随時相談を受け、スタッフとともに直接ケア。
- 月1回、院内勉強会を開催。
Cさん(感染管理認定看護師)
感染対策室に所属(専従勤務)
- 院内をラウンドし、感染対策上の問題がないか点検。
- 感染症発生者を把握し、適切な感染対策が行えているかの確認。
- 感染対策に必要なマニュアルを作成・改訂
- 院内感染の発生率を調査し、感染対策が適切かどうかの確認。
- 病院職員の針刺し予防やワクチン接種など、職業感染を予防。
- 院内学習会を開催
Dさん(認知症看護認定看護師)
回復リハビリテーション病棟に所属
- 特別な活動時間は設けず、日々の業務の中で認知症看護を展開。病棟スタッフ、リハビリスタッフに対して対応の仕方、考え方を伝える。
- 院内のスタッフに対して研修会を実施。
以上、4例ご紹介しましたが、認定看護師の働き方の特徴として、教育指導の機会が多いこと、また組織を横断しての活動が多いことがあげられます。活動範囲は病棟・外来さらには診療所や訪問看護ステーションとの連携や外部向けコンサルテーションと幅広く、看護師だけでなく医師・コメディカルなど多くの職種と協同で活動するため、その影響力は大きく、非常にやりがいのある仕事と言えるでしょう。
【認定看護師になって何が良かった?】
認定看護師になることの一番の魅力は、やはり自分の興味がある分野での高度な知識とスキルが身に付くことでしょう。また資格を取ることで、その分野で継続的に活動が出来るのも大きなポイントです。
「自分の領域については先生よりも詳しいので、治療および看護にあたって対等に話し合うことができる。」
「実践している看護は同じでも、根拠に基づいてきちんと説明できるようになったことで以前よりも信頼が得られるようになった。」
「全国に仲間がいることで、インターネットや誌面だけではなかなか得られない情報交換ができる。実際に他病院で実践されている、すぐに使える内容が多いので非常にためになる。 」
もうひとつのポイントは教育課程を通して看護の原点に立ち返れることです。
多くの認定看護師が「自分の看護観を見つめなおす機会になった。」と言います。
資格取得には、時間も費用もかかりますが、半年かけて「自分はどんな看護をしたいのか」を明確にしておくのは、長いキャリアの中で貴重な指針となるでしょう。
日々、高度化・専門化が加速している医療現場。インターネットの普及で患者自身も病状に詳しく、時にはあふれる情報に混乱している患者に出くわすケースもあるでしょう。
「自分を頼る患者さんの役に立ちたい」「もっと幅広いケアを身に付けたい」と望む看護師さんにとって、認定看護師教育課程は、実践的・専門的な知識が身に付く最良の手段と言えます。
少しでも興味があるなら、早速自分の興味のある分野についてリサーチを始めましょう。意思のあるところに必ず道は開きます。
【働かないと資格失効!?認定看護師資格の更新について】
認定看護師はそのレベル保持のため5年ごとの認定更新制を施行しています。
この更新審査にも受験資格があり、過去5年間の看護実践と自己研鑚の実績が問われます。
ただ資格を持っているだけで、勤務実績が無い場合には資格は失効してしまいます。(病気その他やむを得ない理由がある場合は、認定期間の延長申請が可能です)
更新審査にあたっては審査料3万円と各種申請書類、さらに認定料2万円が必要です。
○認定看護師の資格更新について詳しくはコチラ(日本看護協会のサイトに移動します)
9.気になる疑問に答えます!認定看護師 Q&A
- 現在、認定コースと直接関係のない部署に勤務していますが、受験できますか?
- 実務経験が5年以上、うち特定分野の看護経験が3年以上あれば、現在どこに勤務していても、また、離職中でも受験は可能です。教育課程の募集要項に「現在、特定領域で勤務していることが望ましい」とあるのは、実務経験にブランクがあると、学習することや卒業後認定看護師として活動することが困難であると考えられるからです。
- 年齢制限はありますか?
- 認定看護師になるのに年齢制限はありません。
- 認定看護師の資格手当はありますか?
-
資格手当が支給されるかどうかは、勤務している施設によります。
現状、認定看護師手当の支給されるのは全体の3割弱で、また出ても3,000~5,000円程度の施設が多いようです。ただし、なかには認定看護師資格を持っていることでかなり厚遇される施設もあるため、転職の際には他の勤務条件と合わせて比較検討するようにしましょう。 - 離職中でも認定看護師になれますか?
- 離職中でも認定看護師教育機関を受験することができます。ただし、以前勤めていた施設に過去に勤務していたという勤務証明書を発行してもらう必要があります。また推薦状が必要な教育機関でも、離職中であれば推薦状不要のケースもありますので、一度教育機関に問い合わせてみましょう。
- おすすめの分野はありますか?
- いずれの分野も医療ニーズに合わせて創設されていますので、特別にこの分野がおすすめというのはありません。資格取得およびその後も続く相当量の努力を考えると、自分が興味のある好きな分野を極めるのが一番です。
- 過去問はどこで手に入りますか?
-
認定看護師の過去問題:各教育機関で手に入ります。
教育機関の過去問題:一部の学校は出願した人限定で過去問を開示しています。 - 看護専門学校卒業でも認定看護師になることができますか?
- 認定看護師になるのに学歴は関係ありません。もちろん専門学校卒でも可能ですし、実際にそういった方もいらっしゃいます。
- 病院の助成制度を使うとお礼奉公があると聞きました。辞めづらくなるのでは?
-
「お礼奉公」があるかどうかは施設によります。
「資格取得後一定期間勤務しない場合は、貸与金を返還する」など制度として確立している場合もあれば、心情的に辞めづらいというケースもあります。
辞めたい理由が、夫の転勤に伴う引越しなど止むを得ない場合は、正直に施設側に伝えましょう。また、他の理由の場合でも、現職に留まる努力をした上で、それでも辞めたい場合は仕方がありません。「辞めづらい」のは確かですが、「辞められない」わけではないので安心してください。 - 専門看護師や特定看護師(仮称)との違いは?
-
専門看護師と認定看護師は共に日本看護協会による認定審査を合格した人に与えられる資格です。受験資格および求められる役割など、それぞれ違いがありますので、詳しくは下記の表を参考にしてください。
両者を比較すると、認定看護師のほうが分野が細分化されており、より臨床に近く、専門看護師は卓越した実践に加えて、看護職以外の職種も含めた相談や教育、医療チームメンバーの調整、倫理的な問題の調整、研究能力などが求められてることがお分かりいただけるかと思います。ただし、実際の仕事内容は専門看護師、認定看護師共に医療施設・個人ごとに様々です。
また、よく似た名前で特定看護師(仮称)を聞いたことがある人もいらっしゃるでしょう。こちらはまだ導入を検討段階の資格で、医療行為の一部を医師の指示の下で実施できるという新たな看護師モデルを目指したものです。
〈認定看護師と専門看護師の違い〉 (出典:日本看護協会)
認定看護師 | 専門看護師 | |
---|---|---|
認定看護師認定審査に合格し、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる者 | 専門看護師認定審査に合格し、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して、水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識及び技術を深めた者 | |
目的 | 特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践ができ、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上をはかる。 | 複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識及び技術を深め、保健医療福祉の発展に貢献し、併せて看護学の向上をはかる。 |
役割 | 看護現場において実践・指導・相談の3つの役割を果たすことにより、看護ケアの広がりと質の向上をはかることに貢献する。 | 実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究の6つの役割を果たすことにより、保健医療福祉や看護学の発展に貢献する。 |
受験資格 |
■日本国の保健師、助産師及び看護師のいずれかの免許を有すること ■実務研修が通算5年以上あり、そのうち通算3年以上は認定看護分野の実務研修であること ■日本看護協会が認定した『認定看護師教育課程』を修了していること |
■日本国の保健師、助産師及び看護師のいずれかの免許を有すること ■実務研修が通算5年以上あり、そのうち通算3年以上は専門看護分野の実務研修であること ■看護系大学院修士課程修了者で日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計26単位または38単位)を取得していること ■現在、看護実践を行っていること |
分野 | 救急看護、皮膚・排泄ケア、集中ケア、緩和ケア、がん化学療法看護、がん性疼痛看護、訪問看護、感染管理、糖尿病看護、不妊症看護、新生児集中ケア、透析看護、手術看護、乳がん看護、摂食・嚥下障害看護、小児救急看護、認知症看護、脳卒中リハビリテーション看護、がん放射線療法看護、慢性呼吸器疾患看護、慢性心不全看護の21分野 | がん看護、精神看護、地域看護、老人看護、小児看護、母性看護、慢性疾患看護、急性・重症患者看護、感染症看護、家族支援、在宅看護の11分野 |
審査内容 | 筆記試験 |
1次審査:書類審査 2次審査:看護実績報告書 筆記試験(論述式) |
登録人数 | 8,993人(2012年7月現在) | 795人(2012年7月現在) |