手術室看護師について
手術室看護師とは、病院の手術室に配属された、手術における医師・患者双方のサポートを行う役割を持つ看護師のことです。
加速する高齢化社会に伴い、手術件数は年々増加しています。日本手術看護学会調べによると、手術室における看護配置は1室につき4人配置の状態が望ましいとされていますが、その状態の病院はまだ少ないというのが現状です。
今後より多くの手術を安全に行うためには手術室看護師の確保が不可欠だともいわれ、今非常に需要が高まっている職種です。
手術室看護師の主な仕事内容
手術室看護師の主な仕事内容は「器械出し」「外回り」の2つです。それぞれの役割を担う看護師が1人ずついて初めて、手術を行うことができます。
では、これらの仕事内容がどのようなものかを見ていきましょう。
器械出し(直接介助)
手術で使用する器具を手渡す等、主に医師のサポートを行う役割です。
具体的には
- 手術器具を用いた疾患部への直接援助
- 術野に使用する手術器具の判断
- 医師への手術器具の手渡し
- 手術中の滅菌状態の保持
など。
手術室看護師の特徴として、ほぼ全科目の手術を担当することが挙げられます。
各診療科で扱う器具は変わり、手順も違います。そのため、器械出しの看護師はあらゆる科目の手術器具の知識と手順を覚えることが必要です。進行している手術の現状を全て把握した上で、患者から目が離せない状態の医師に対し、その時々で最も最適な器具を素早く手渡すという判断力が問われます。
器械出しは手術室看護師をする上で必要な知識をすべて身につけられる業務であるため、配属後はまずこの業務を担当する新人看護師が多いようです。
外回り(間接介助)
手術中における患者のケアを行うと同時に、手術室全体の流れを把握するマネージャーのような役割です。
具体的には
- 手術前訪問の際の声掛け
- 術中の体位交換
- 看護記録の作成
- 輸血タイミングの指示出し
- 手術後、病棟看護師への申し送り
など。
外回り役の看護師は、患者の家族へ状況を伝えに行ったり、必要に応じて医師のサポートも行うという役目も背負っています。次に何をすべきなのか自ら指示を出すために、常に全体の状況を把握する分析力が必要です。
手術室看護師には、器械出しにおける知識を深めることによって手術時間の短縮へと直接働きかける事ができ、外回りでは手術で不安になることも多い患者や家族に対して、メンタルケアを行えるという2つの大きな醍醐味があります。
手術室看護師の魅力
手術室で働くことについての魅力は、大きく分けると
- 手術のスペシャリストになることができる
- 病棟看護師として成長していきたいと思った時、より深い知識を元に看護ができる
- 看護師としての素質を高めることができる
の3つが挙げられます。
1.手術のスペシャリストになることができる
単科病院を除き、大体の場合手術室看護師は全ての科目の手術を担当します。そのため「器械出し」「外回り」共に、幅広い手術の知識を身につけることができるのです。看護師の中でも特に専門性を究められるのは大きな魅力です。
2.病棟看護師として成長につながる
手術室看護師は、患者の術中状態を詳しく知ることが出来ます。外来・病棟では術前と術後の患者が看護対象ですが、術中状態や処置の仕方を知っていることで、より深く患者のためを考えた看護が可能です。病棟看護師として更に良い看護を目指すべく、一度手術室を経験しておくという看護師も多いようです。
3.看護師としての素質を高めることができる
「器械出し」で求められる素早い判断力と「外回り」で求められる冷静な分析力は、看護師としての素質に大きく関わってくるものです。この2つのスキルに特化した手術室での仕事をすることは、看護全般に役立つスキルを積むことにも繋がります。
ちなみに手術室での業務は、比較的生活リズムを整えやすい職場といえます。
整形外科・肛門科・癌科など「緊急手術」が発生しない単科の手術室の中には、夜勤もオンコールもないところも。「予定手術」のみの手術室は比較的残業も少ないため、上記のように言われやすいのです。
手術室看護師になるためには
手術室看護師になるために、特別な資格は必要ありません。看護師免許さえあれば、未経験・経験の縛りは無く、誰でも配属希望を出すことが出来ます。
ただ、手術室看護師は専門的な知識に特化した部分が多い業務のため、一度病棟経験を積み看護師としての基礎を学んでからの配属が望ましいと考えている病院も多いようです。
件数が増え続けている手術の質・安全性を高めるために、必要不可欠な存在である手術室看護師。手術中の患者さんの状態を知り尽くすことは、手術室看護師を極めるためにはもちろん、病棟で働くうえでも必ず役に立ちます。看護師としてのスキルアップを目指している方は、一度挑戦してみてはいかがでしょうか。